フリーペーパー うぇるかむ

「うぇるかむ」は、東日本大震災により、山形県へ多数の方が避難されたことをきっかけに、2011年8月に創刊されました。詳しくはこちらをご覧ください
「きみは泣いているだろうか? ぼくは泣けるようになったよ」
こんな言葉で締めくくる主題歌「満月」。
 撮影は、宮城県亘理郡と、福島県飯館村へと尋ねる。
 亘理郡では街が大きな被害を受け、大人も、子どもも、多くの方が亡くなられた。仮設住宅地内にある地元ラジオ局では、月命日に必ず亡くなった方々の名前と年齢を、一人一人、丁寧に読み上げる。読み上げる声は、時々小刻みに震える。
「名前にはその人の人生が詰まっている」と女性は言う。街の人は、ラジオから聞こえる一つ一つの名前に想いを浮かべては、小さくうなずく。
 自然豊かな飯館村では、ある女性がそこに住み続ける。
「ここは空間で一〇ミリシーベルトもあるの。結構高いでしょう。でもね、亡くなった夫は『ここは天国のようだ』と言って、とても気に入っていた。人間は取り返しのつかない事をしてしまったの。やっと今、それに気が付いてしまった」卵から孵ったばかりのサンショウウオを手のひらで泳がせながら、彼女は話す。
 大切な人、大切な名前、大切な風景。人や想いの暖かさを感じる作品に久しぶりに出会いました。震災映画は苦手、という方も良かったらご覧になってみて下さい。(多田)