フリーペーパー うぇるかむ

「うぇるかむ」は、東日本大震災により、山形県へ多数の方が避難されたことをきっかけに、2011年8月に創刊されました。詳しくはこちらをご覧ください
[寄稿]JR常磐線全線開通 浪江駅~富岡駅

 震災から9年目、福島県浜通りでは復興の大きな動きがありました。それは3月14日JR常磐線の全線運転再開です。それに先立ち、3月4日双葉町(双葉駅周辺・避難指示解除準備区域)、3月5日大熊町(大野駅周辺)、3月10日富岡町(夜ノ森駅周辺)と立て続けに避難指示の解除を迎えました。
 不通だった浪江駅から富岡駅までの区間が無事運転再開となりましたが、この日を迎えるまで、浪江駅から先の動かない踏切とその先の線路を見る度「復興していない現実」に切ない思いになりました。動かない踏切が動き出す、そんな日にぜひ立ち会ってみたいと思い、当日浪江駅の始発で富岡駅まで短い往復の旅を思いつき、まだ暗い中浪江駅へと向かいました。

 切符を購入、始発電車を迎えた時は胸が高鳴りました。でも、乗り込んで車窓から見える景色は、まだ桜も咲かない早春という事もあり、荒涼として、更地や復興工事真っ最中の場所もあちこち見えて、動かない時間を感じ、悲しく思いました。

 一方で駅の施設に注目すると、浪江駅から富岡駅まではどれも無人駅なのですが、新しい機器類が導入されて、切符の購入はもちろん、乗り越し等トラブルがあっても心配なく整備されていました。各駅の放射線の電光掲示板に現実を感じますが、大事な事です。私の記憶の中では震災前上りの特急の車窓から眺めた各駅の姿がそのままだったので、「ああ、時間が動いている…」という思いでいっぱいになりました。列車の旅を楽しむ普通の生活を取り戻せたら、それも「復興」なんだと実感する、小さな旅でした。
(南相馬市S)