フリーペーパー うぇるかむ

「うぇるかむ」は、東日本大震災により、山形県へ多数の方が避難されたことをきっかけに、2011年8月に創刊されました。詳しくはこちらをご覧ください
長井市 株式会社鈴木酒造店 長井蔵 鈴木荘司 さん

長井市 株式会社鈴木酒造店 長井蔵
鈴木 荘司  さん

Q 震災の前、震災時はどこで過ごしていましたか?
 生まれは福島県浪江町で、両親は酒造店を営んでいました。家業を継ぐことは自分にとって当たり前の事で、高校卒業後に東京の大学に進学し、その後兵庫県の「西山酒造場」で3年間修業をしました。その後、兄と家業を継いで酒造りをしていました。
 震災時は、津波で家も酒蔵も流され、浪江町津島に避難しました。その後、福島市から米沢市へ家族とスタッフ総勢13名で避難し、兄の知り合いから紹介してもらった宿泊施設で1ヶ月間過ごしました。妻の実家がある鶴岡市にも一時避難しましたが、自由な時間がありすぎて余計な事を考えてしまう毎日でした。酒造りの再建をあきらめて何か仕事をしようと、一時就職もしました。

Q 酒造店を再建するきっかけは?
 「長井市にある蔵元『東洋酒造』が酒造りをやめるため、店舗を引き継ぐ人を探している」という情報を聞いて、やはり酒造りを再開したいと、家族会議をして再建を決めました。
 長井市で「鈴木酒造店」を再開することになり、たくさんの人が応援してくれました。ある日、玄関前に空になった酒瓶と共に「とてもおいしかったです。がんばってください。」と貼り紙が置いてありました。それを見た時は、とても嬉しかったです。そんなこともあり、浪江町では、自分が好きな味の酒を造っていましたが、今は「皆さんが美味しいと思うお酒を造りたい」と思うようになりました。長井市の水はきれいな軟水で、それがそのまま酒質に表れます。自然が豊かなこの土地ならではの美味い酒を造ろうと、頑張ってきました。

 

Q どんなお酒を造っていますか?
 復興の酒「甦る」は、長井市の方、避難者の方など、多くの人の協力を得て生まれた酒です。そのラベルは、稲穂とその周りに人と人とが輪になり、手をつなぎ繋がっている絵柄になっています。お酒を中心に人とつながる事ができる、これは造り手冥利に尽きます。
 浪江町にいた頃からずっと造っていた、魚によく合う旨口の酒「磐城壽」と、長井市で生まれた柔らかな酒「一生幸福」も、飲んでもらいたいと思います。

Q これからの目標を教えて下さい。
 故郷の浪江町も、警戒区域が解除になり復興が始まっています。4年前からお米を作り始めており、そのお米でお酒を造ってほしいと依頼を受けて造り始めています。浪江町では農業が始まり、27軒のお店もできました。毎月1回、役場でイベントを開催していて、人がたくさん集まりお酒も販売していますが、これからも浪江町の復興をお酒で発信していけたらと思っています。

 

避難者、帰還者へのメッセージ
 今回の震災は前例のない複合型災害だったので、避難されている方、帰還された方、留まっていた方、全ての方の行動は不正解のないものだったと思います。皆さんが家族を想い、それぞれの正しい行動を取り震災から7年が過ぎました。
 自分の子ども達や次の世代に、過去に起きた事を伝えるのはとても大事なことだと思いますが、自然な笑顔で生活していること自体が復興や未来へ前進していくものだと信じています。

株式会社 鈴木酒造店 長井蔵
〒993-0015 長井市四ツ谷1-2-21
TEL:0238-88-2224
FAX:0238-88-3503
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