フリーペーパー うぇるかむ

「うぇるかむ」は、東日本大震災により、山形県へ多数の方が避難されたことをきっかけに、2011年8月に創刊されました。詳しくはこちらをご覧ください
フリー農家サポーター/神楽篠笛奏者 鶴岡市 井戸川美奈子さん

自フリー農家サポーター/神楽篠笛奏者
鶴岡市 井戸川美奈子 さん

 

◆Q 震災の時はどこで過ごしていましたか?

 南相馬市小高区出身です。震災の時は病院に勤めていました。震災直後は震災を受け止める事ができず、東京で仕事をすぐに始めて、日常に戻ろうとしましたが、東京の日常の速さが苦しくなっていきました。「やっぱり家族の元に帰ろう」と、姉夫婦、両親と犬が先に避難していた鶴岡市に来ることにしました。

 

◆Q 篠笛を始めたきっかけは?

 鶴岡に来てから、震災以前からしていた医療事務の仕事に就きましたが、この震災の中、何もできない自分に無力感や強い違和感をずっと抱えていました。震災以降「何をもって復興なんだ?」とずっと考えていました。辿りついた答えは「一人ひとりの気持ちが立つことが復興」。震災後の「これから」を生きるため、この土地にいる事に感謝したいと思った時に、神楽をやりたいと思い、神楽ができる所を探しました。
 元々中学の時に吹奏楽に入っていた事もあり、篠笛をはじめると、後継者不足で神楽を断念しようとしていた地域の人にとても歓迎されて、あちこちの演目で呼ばれるようになりました。神楽は地鎮の為の祈りの伝統。神楽を始めて、震災で自然の恐ろしさを体験した分、土地の神仏に祈りとご供養の念を捧げる場所を無くしたくないという気持ちも生まれました。子どものうちに神楽に触れる事もすごく大事だと思うので、地元の子どもたちにも聞いてもらいたいです。

 

◆Q 農業を始めたきっかけは?

 神楽を通じて知り合った農家の方が、「人手不足だから手伝って欲しい」と言ってくれた事をきっかけに、農業の手伝いを始めました。今は3件の農家さんの作業の手伝いをしています。
 農業はその土地の気候風土がそのまま表れた物。そこに身を置くと言葉を越えたコミュニケーションがある。農業に触れていると、震災で傷ついた自分をこの土地と風土が癒して、この土地に生きるもう一人の自分を作ってくれている気がします。農業を通してこの土地と人との関係性をはぐくみ、自分もこの土地に馴染めるようになりました。
 人間のすることは、自然にはかなわない。それは当たり前なのに、自然からかけ離れて生活して来たから、地震があって右往左往してしまった。自然のサイクルに人が合わせていく。今はそんな自然に沿う生き方がしたいと思っています。自然に触れるこういう仕事をしながら『生き物としての当たり前』を取り戻しているような感覚です。

 

◆今後はどんな事をしていきたいですか?
 この地域や文化、暮らしや人にフォーカスして、そこで大事にしているものを発信したい気持ちがあります。結果しか見ない世の中になってしまったけど、過程の中に大事なものがある。日々の暮らしの中の大事な物を次の世代に渡していきたい。甥や姪は震災で故郷を失いました。自分が甥や姪に土に触れる機会を作ってあげられたらいいなとも思います。次の世代に色んな生き方や選択肢がある事を、自身が実践する姿を通して伝えていきたいです。

 

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