フリーペーパー うぇるかむ

「うぇるかむ」は、東日本大震災により、山形県へ多数の方が避難されたことをきっかけに、2011年8月に創刊されました。詳しくはこちらをご覧ください
私を救った一本のメール
ラジオ福島アナウンサー 鏡田辰也さん

 

 これほど「しゃべり」が無力だと思ったことはありませんでした。何をしゃべっても被災した人には届かないと思いました。息苦しいししゃべりたくない、マイクの前に立ちたくない。5日目で会社を辞めようと思いました。仕事を辞めたくて「もうしゃべれません」と上司に言った時、「君のキャラが県民を勇気づける時が来るから辛抱しろ」と言われ、感情を入れずに、入ってきた情報をただ正確に伝えることに徹していました。
 その頃、ラジオを聴いているファンからメールが来たのです。
「昔、体育の先生が『大丈夫』という言葉には3人の人がいるから安心できるんだということを言われました。今その言葉を鏡田さんに伝えたい」という内容でした。それ以来、辛い時は「大丈夫」という言葉を自分に言い聞かせています。
 講演会でこの話をすると、会場のお客さんがみんな泣くんですよ。だから自分ももらい泣きしてしまいました。(笑) 私の話は笑いの話ばかりなので、涙が入るということはとても珍しいことなのです。
 9か月経ってみて思うことは、例年通りに白鳥は飛来するし吾妻小富士は白くなるなぁということです。季節が変わっただけで、賠償や除染などはあまり進んでいません。立場の違いによって連携が取れないこともありますが、一方では被災者同士が助け合うようになってきたと思います。
 放送局として伝えなければいけないこともあるし、会社を存続させるためにそれ以外のこともやらなければいけない。でも、私はラジオを通して「大丈夫」と言い続けていきたい。
★鏡田辰也 かがみだたつや
 広島市出身 47才
 ラジオ福島アナウンサー
 愛称はカガちゃん