山形市在住 カウンセラー
志村 友理 さん
震災当日、東京からのクライアント。帰宅困難者となった彼らを自宅に迎え入れ、停電中の暗闇の中8人の共同生活を送ることに。恐怖を感じやすい真っ暗闇を楽しむコツを伝えながら、電波の状態の悪いラジオに耳を傾ける。どうやら太平洋側では大変な状況になっているらしい。東京に帰宅しなければならないママと息子、仙台に戻らなければならないご主人。離れ離れになる不安を抱えている彼等の心に寄り添うため、今後も共に問題を越えていこうと約束をして、数日後、ご家族がそれぞれの地に旅立つ瞬間を見送った。
時を同じく携帯の電波が繋がった頃から、他のクライアントから相談の連絡が入り始める。子どもが「コワイ」と言って泣き止まない。いつしか相談の波は東京を離れ仙台へ、仙台から沿岸部へと流れていった。
震災当日から今日まで、被災者・避難者と呼ばれる方の話を聴き続けている。自分一人では片付けられなくなってしまった心の中の瓦礫(問題)を、一緒に片付けるお手伝い。生きていくことがツライと言う方が、それでもこれからを生きていくためには、心の中にある引き出しのごちゃごちゃした中身を整理する必要がある。
『本当は、あなたはどう在りたいの?どんな自分だと幸せと感じられるんだっけ?』
今と、これからを幸せに生きるために、優先順位を見つめ直し、未来への希望に繋げていく。答えは自分自身の中にしかないからこそ、自らでその答えを見つけ出すまで、そっと寄り添い、必要なタイミングで問いを投げかける、それがわたしの取り組み。
『今』の自分達にとって、一番大事にしたいことは一体なに? 家族との絆と答える方もいるだろう。子どもの健康という方もいるだろう。どれも間違いじゃない。ここまでの種々の選択もすべて間違いなんかじゃない。自分達が選び取った経緯から学んだことや気付いたことがあったはず。問題は外にあるんじゃない。心の中に生まれるんだ。
志村 友理 氏 プロフィール
東京都出身。カウンセリング・セラピー・プログラム療法を通じて心のケアを行う傍ら、日本の伝統文化である天然香を用い、自らの本質に出逢う講座(香術)を開き、伝承している。また、こどもの心を育むためのワークショップ、読み聞かせ等の活動を行なってきた。
震災以降は被災・避難された方々に耳を傾け寄り添う活動を続けるほか、傾聴ボランティア講座の講師等を務める。